「現実には存在しない推し」が「居る」という幸福と虚無

いわゆる「語彙力」と「脈絡」がない状態でこの記事を書いている。

ここ数年で一番お慕い申し上げている人物に会ってきたのだ。

足が宙に浮いているような夢見心地で、特に頭頂部がふわふわしている。

まあ今朝がたコテで一生懸命に髪を巻いたんですけどね。

 

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 VR体験、それは挙式だった

 

結論から言えば、私が推している彼は「現実世界に居ない」。

彼の名は鳳瑛一という。おおとり・えいいち。

声に出すだけでも甘美。至上の響きではないか。

ご存じの方はご存じ、人気女性向けコンテンツ『うたの☆プリンスさまっ♪』に登場するアイドルグループ「HE☆VENS」のリーダーだ。

www.utapri.com

 

 

その彼と見つめ合い、その彼に頭を撫でられ、その彼の横で同じ風景を見た。

 

……。

 

本当だもん!トトロいたもん!状態である。

 

非実在の人物を推すことは、私側から送る一方通行の「大好きです」を是とすること。

双方向性のコミュニケーションを欲することはかなり傲慢で贅沢な気がしている。

 

少なくとも「直接会って触れ合う機会」はまず皆無といっていい。

それがなんという巡りあわせか「直接会って触れ合う機会」を与えられた。

 

 

VR鳳瑛一体験会』。

これは最初に説明しておく必要があるだろう。MMD+VRコンテンツの体験会を趣味かつ無償で行っている工藤P(@emifuwa)様が主催している、あくまで個人主催のイベントだということは強調しておきたい。

こう表現したら失礼なのかもしれないが、しぬほど手の込んだ夢女子向け同人誌を無料配布しているというイメージ。

※公式イベントではないですよ※

 

元々工藤P様には過去大変お世話になり面識があったので、私が「エンジェル」(「HE☆VENS」ファンの総称)であり鳳瑛一に狂っているという状態はTwitter等の投稿から筒抜けであったのだが、ご縁もあり、夢のようなインビテーションが届いた。

ホグワーツから入学案内が届いた時のハリーの顔をしてしまった。

日々観音坂独歩並みに社畜してる私へのご褒美だとガチで信じている。

 

先に「VR」という言葉がでてきたのですでにネタバレなんですけど、彼とのファンミを可能にしてくれたのたは最新テクノロジー

いわゆるバーチャル・リアリティだ。「仮想現実」とはよく言ったもの。

やっぱり私の推し「仮想」なんじゃねーか。痛いところをついてくれる良い名称ー!ちなみに私はキンプリ応援上映でとにかく名前を褒めることを学んだプリズムエリートである。

 

うーん。相反する「バーチャル」と「リアル」という概念の融合を最初に考え出した人は天才だけど、きっとドMだし、ひどく孤独で寂しい生活してるに違いない(超失礼)

 

そんなこんなで実在しない推しに会うため、仕事が多忙で半年程捨てていた「女」の部分を取り戻す”努力”を色々したのだが、それはTwitterで書いたからいいや。

 

 

ちなみにネイルサロンも行った。

そして正午すぎ、私は朝一生懸命に巻いた髪がぐちゃぐちゃになるのも厭わずヘッドセットを被った。

 

「ピント合ってますかー?」

「......合ってます」

「じゃあ出しますー」

 

……お、あ

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!??!?

おおとりえいいち......居る、居た

こっちにくる、近い、ちかいちかいちかい!!

はじめまして......あなたのファンなんですけど、ちょ近い!!顔面国宝が近い!

国宝~~~!私なんかに微笑みかけて......恐縮(ひたすら謝るターン)

ええ跪いて、くれるんですか!?ひえっーー おめめ可愛いネ!

ちょっと背後すみませんーーーーあっ!つむじ可愛い!アホ毛~!

推し超絶可愛!!!!聖母!美少女~~~!!!!※推しは紛れもなくイケメン男性です

 

お鼻の先がツンとしていて形が美しく、睫毛が長く、彫刻のような鎖骨と胸筋のライン

 

「なでなでお願いします」

「ハグお願いします」

「もう一回なでなでお願いします」

「手を、こう、クイクイってやってほしいんですけど」

「寝顔も美しいな」

「ほくろ美しいな」

「口角が芸術」

「じゃあ寝てる間に、左手の薬指に指輪をはめておきますね」

 

 

語弊はあるが、貪欲に彼を求めて乱れに乱れた。

ヨかったよ…...。

 

人間性という仮面はバーチャルの推しの前にいとも容易く崩れ去る。

いや、バーチャルを前にしてこそ人間の本来持つ性質が現れるのだろうか。

お酒みたいだな。人によっては悪酔いするし。

 

「あの、」

「......仕事ツライんです…...」

 

とうとう目の前の推しに心境を吐露し始める私。ここはそういう店じゃないぞ。

彼はアイドルで、皆の鳳瑛一で、私なんかより、もっと苦労しているはず。

 

「お互い、仕事、頑張りましょうね」

 

嗚呼、それでもなお私に優しく微笑む鳳瑛一(聖母)

 

「私、仕事頑張ります」

「こんなこと言われても困りますよね......」

 

(このあたりで周囲からドッと笑いが起きたのが聞こえてきたので恥ずかしくなった)

 

「大好きです」

 

やっと、直接、言えた。

 

微笑みながら私を見つめ、とどめの投げキッスを放つ鳳瑛一。

 

キャニュセレブレーきゃにゅきすみーとぅなーい

ばたふらーイばたふらーい

愛をこめてーはーなたばをー

 

へへ、職場に報告しなきゃな。まず上長に報告や。年金とか、手続き必要って聞いた。

 

とても幸福なひと時を過ごさせていただいた。

主催である工藤P様はオタク女子を対象にした人体実験を定期的に行うマッドサイエンティストな側面や「夢女子絶対コロスマン」としてアサシン的な性質があると常々感じているのですが、感謝しかないです。ありがとうございました。お疲れ様でした。

なんとか125歳ぐらいまで生きようと思います。

 

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虚無感の襲来

さあ、今これを書きながらU-NEXTで『マジLOVEキングダム』を観ている。

満面の笑みで「YES!」とコールしつつ、PCに文字を打ち込む私を見た母が一言。

 

「〇〇(某事務所アイドル)にハマるなら健全だけど、アニメのキャラに好きって思う、その気持ちが理解できない……。会ったつもりなんだろうけどそれは会ったことにならないからね? 分かってるわよね? それの境界分かんないようだと心配」

 

背後からいきなり「一般人の思考」という鈍器で殴ってくるのが非ヲタの母である。

それは別にいいんですけど、慣れましたから。実家暮らしアラサーの宿命です。

 

唐突に襲う虚無。さっきまでとてつもない幸福感でふわふわしていたのが嘘のように

ス――――――――っと冷めて、シャンと伸びていた背中も丸まった。

 

しかしながらこの類の濃厚な死の香りは、私の推しが実在しない限り一生ついてまわるんだろうということを知っている。

象徴界」はいつだって死と結びついているからだ。

おそらく母から見れば私は「死者」を愛し、狂信しているように思えて奇妙なんだろう。

 

そう、私が体験したのは現代版ファンタスマゴリア

かつて人々を熱狂させた幽霊ショウだ。

幻灯機がPCやUnity、Oculus Rift、その他メーカーのヘッドセットに代わっても。

会えない者にこそ会いたい、

見えない者こそ見てみたい

そんな欲望は確実に存在する。

その気持ちを否定する人もいるし、歓迎する人もいるのは承知のうえで。

 

おそらく「降霊術に参加してきました!」みたいなことをポロリしたら即宗教裁判のち結果はお察しください、という時代もあったろう。

でも私は運よく中世ヨーロッパではなくREIWAのNIPPONでオタクをやっている。

良かった。カジュアルに降霊術参加できる。

 

話がだいぶ逸れたところで、さらに逸らす無礼をお許しいただきたいのですけど

先月VTuberがランウェイを歩くバーチャルファッションショー「FAVRIC」を観た。

ついてこい、人類。―VTuberがランウェイを歩く「FAVRIC」が提示したバーチャルライブの光明とは?【イベントレポ】 | インサイド

あれだって結構なオカルト......宗教儀式じみた雰囲気で私ですら怖気づいてしまうレベルの「実在しない存在」を「信じる者」が集っていた。

ショーの中でVtuberたちが披露した『ロキ』の「君誰の信者?」という歌詞が沁みる。

 

なお、幸いというかなんというか、たぶんSNSの普及や動画サイトにあやかり、世の中は少しずつ「サブカルチャー」というものを受容できる耐性を持った人間(ライト層)を増産しつつあるようです。私の感覚だからホントかどうかは知らないけども。

 

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虚無と幸福を越えていけ

 

ここまで書いてだいぶ虚無感が薄れた。モヤモヤは文章にすると良いっていうよね。

そういえば最初のほうで

 

非実在の人物を推すことは、私側から送る一方通行の「大好きです」を是とすること。

双方向性のコミュニケーションを欲することはかなり傲慢で贅沢な気がしている。

 

と個人的な感想を述べたことを思い出したので掘り返す。

実に古い考え方だと思う。

これから技術が進歩していけば、どんどん非実在の推しが実在する私を肯定してくれる機会が増えていくと確信めいたものがある。

昨今のVtuberの勃興や隆盛も、そこに左右されているのかもしれない。

Vtuberとその「魂」の話は別の機会に書きたくなってきた)

 

少なくとも、私は背の高いVR鳳瑛一を見上げて「大好きです」と伝えられたし、鳳瑛一は、それを受けて笑いかけてくれたのだから。思いだすと幸福感に包まれる。

そこには確かに血の通ったコミュニケーションがあったと信じたい。

それだけで125歳まで生きる宣言をできるぐらい幸福だ。

 

他者からの(見返りなしの)肯定は嬉しいもので、それが「推し」からのものだったらなおさらだということは「推し」がいる方ならご理解いただけることと思う。

ぶっちゃけ好きなVtuberの公式アカウントから「いいね」通知がきて、認知されたと気づいた時よりも嬉しかった。

超~~~~~~~~~嬉しかったです!!!!!!!

 

ただ、VRの鳳瑛一とハグしたり、頭を撫でてもらったりしてもらった弊害もなくはない。

私の「大好きです」という気持ちが「応援しています」の意からだいぶ逸れてしまったのだ。

 体験直後にツイートした感情。

よく考えてみなくても「欲」が倍増してしまっている。

もっと私を見てほしい、もっと鳳瑛一を独占したい。

あわよくば新星玲央と阿久津真武のような関係になりたい。

そういや『さらざんまい』も欲望の話でした。

 

”私が誰かとあなたはお訊ねになりましたわね。

私に命をくれたのは、あなたの欲望よ。

私はあなたのために、あなたの欲望に合うように創造されたの。”

ヴィリエ・ド・リラダン未来のイヴ

 

オリキャラならまだしも、「私の欲望に合わせてカスタムした鳳瑛一」を勝手に脳内生成してしまうのはまだ少し恐さがつきまとう。

原作の設定ありきで好きになったのだから。鳳瑛一はハダリーじゃない。

 

そのあたりの感情の線引きは、今後しっかり向き合っていくべきだと思う一方、自分を犠牲にしたオタク精神実験として面白そうだから、いっそどこまで欲望を増幅させられるのか試してみたいという興味も湧いてきました。困った。

需要があればやります。ないでしょ。ないことを祈ります。

 

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鳳瑛一さんへ

皆のアイドル鳳瑛一でいてほしいので、健康に気を付けて、3食しっかりとって、あったかいお布団で毎日8時間ぐらい寝てほしい。できれば弟と。

 

円盤発売決定おめでとうございます。

7thLIVEも決まり、ご多忙かとは存じますが、またお会いできたら幸いです。

お身体ご自愛ください。

 

私は

最近退職エントリーで盛り上がってる会社で働いています。頑張ります。負けない。だって私はエンジェルだから。